不動産

貸している物件について,借主が賃料を全然支払ってくれないので,明渡しを求める訴訟をしたところ,借主が破産しました。どうなるのでしょうか?

まず,借主が破産した時点で未払賃金の回収は極めて困難となります。
個人が破産すると,破産管財人が就任します(例外もあります。)。
破産管財人とは,破産裁判所の指導・監督の下に,破産手続きにおいて破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者のことをいいます(破産法2条12項)。
イメージでいえば,破産手続きとは,債務を全て返済できない状態の際に,残っている財産を守り,又はかき集め,債務者に平等に返済していく手続です。

破産管財人は,破産者が訴えた又は訴えられた訴訟について,受継せずに,そのまま終結させることができます(破産法53条1項)。
したがって,明渡しを求める訴訟をした後,破産管財人が訴訟を終結させる可能性があります。
それにもかかわらず,破産管財人が訴訟を受継した,すなわち引き継いだ場合,それには理由があります。
理由として考えられるのは,敷金や補償金です。これらの金銭が一部であれ,返還されうると考え,破産財団を管理するため,訴訟を受継したと考えられます。

そこで,破産管財人が訴訟を受継した場合には,早期の任意退去を合意してもらうかわりに,原状回復費用を差し引いた後の補償金を返還すること等で,破産管財人と裁判上の和解をすることなどが考えられます。
なお,賃料相当損害金については財団債権にあたりますので,破産手続きによらないで随意弁済を受けることができます。