労働問題

きちんと断った後も会社が退職勧奨を続けてきます。損害賠償請求ができるでしょうか?

退職勧奨は,会社の意思表示が非常に固い例外的な場合を除けば,単なる労働契約の解約申し込みを行う事実行為であると法的には分析されます。
退職勧奨は,社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗なものについては,公序良俗に反し,違法な行為であるとして不法行為による損害賠償請求が認められる余地があります(この場合,労働契約の合意解約についても無効となる可能性さえもあります。)。

ただし,退職勧奨が複数回に及びなされていたケースで,明確に退職勧奨に応じない旨,会社に表明した後についても退職勧奨を行うことが争われたケースにおいて,「従業員らが消極的な意思を表明した場合であってもそれをもって直ちに説得活動を終了しなければならないものではなく,当該従業員らに在籍しつづけた場合におけるデメリット,退職した場合におけるメリットについて具体的に丁寧に説明,説得活動し,真摯に検討してもらえたのかどうかのやりとりや意向聴取をして,再検討を求めたり,翻意を促したりすることは,社会通念上相当と認められる範囲を逸脱した態様でなされたものでない限り,当然に許容され,違法な退職勧奨とならないと判断した裁判例(東京地判平23・12・28)があります。

この裁判例からすれば,一度退職勧奨を断った後も会社が退職勧奨を継続することだけをもって,損害賠償請求ができることが確実になるわけではありません。
事案を詳しくお伺いして,損害賠償請求ができるか,検討していく必要があります。