労働問題

長々と残業する人に対しても残業代を支払わなければならないでしょうか?

原則としては支払う必要があります。
もっとも,注目すべき裁判例として,使用者の明示の残業禁止の業務命令に反して,労働者が時間外又は深夜にわたり業務を行ったとしても,これを賃金算定の対象となる労働時間と解することはできない」と判断したもの(東京高判17・3・30(神代学園ミューズ音楽院事件))があります。

したがって,会社から明示的に残業禁止の命令を行えば,従業員がその命令に反して残業したとしても残業代を支払わなくてよくなることがあります。
もっとも,残業禁止命令が形式的なものに過ぎず,命令後にも残業をしているのにもかかわらず是正を求めていなかったり,与えられている業務量が通常の所定労働時間内で処理することが明らかに困難であったりする場合には,黙示の残業命令があったということになり,残業手当の支払が必要となる場合がある点には注意が必要です。