労働問題
従業員を出向させることは会社が自由にすることができますか?
出向は,配転と異なり,労務提供の相手方や指揮命令権者が変動し,労働条件,キャリア,雇用等の面で労働者に不利益が生じ得ます。このことからしても,出向を命じることが無制限に可能とはされていません。
具体的には,出向を命じた従業員から,出向命令は無効だとして,出向先で就労する義務がないことを認める訴訟を提起される可能性があります。そのような訴えが提起された場合,会社としては,出向命令が有効であることを,自ら主張立証していかねばなりません。有効であることの主張のためには,出向命令権が就業規則に規定されていることや出向について従業員が同意したことを言うほか,会社が出向命令権を行使したことも言わねばなりません。
そして,これらの主張が立証できたとしても,出向命令が無効となる場合もあります。それは,①当該従業員との間で,勤務場所や職種等を限定する合意があり,出向命令がその合意に反している場合,②出向命令が権利の濫用にあたると認められる場合,③労働協約に反し,労働組合との協議等を怠った場合及び④不当労働行為にあたる(労働組合法7条1号)など,強行法規に違反している場合です。