不動産

建物の建築を依頼しましたが,完成した建物の出来が悪いです。建て替えをしたいので,その費用相当額を請求できますか?

出来の悪さ(瑕疵の重大さ)が著しい場合であれば,請求することができることとなる余地があります。
建替費用相当額の請求の際に,障害になる条文が民法635条です。
民法635条は,本文において,「仕事の目的物に瑕疵があり,そのために契約をした目的を達することができないときは,注文者は,契約の解除をすることができる」と規定しています。

今回問題になるのはただし書の方で,後段では,「ただし,建物その他の土地の工作物については,この限りでない」と規定されています。建替を認めることは,契約をなかったことにする(解除する)ことと実質的には同じなので,建替費用相当額を請求することは民法635条の趣旨に悖るのではないかという問題です。
この問題については,なぜ建物について,民法635条が解除を認めないのか,その趣旨に立ち返って検討されています。
すなわち,民法635条の趣旨は,契約の解除を認めると,何らかの利用価値があっても請負人は土地からその工作物を除去しなければならず,請負人にとって過酷で,かつ,社会経済的損失も大きいから,解除を制限したものと考えられます。

そうであるならば,瑕疵が重大な建物については,そのような建物を建築した,言ってしまえば悪質な請負人に建替費用を負担させるのは過酷ではないですし,そのような瑕疵が重大な建物を壊すことは社会経済的に損失が大きいとはいえません。
したがって,建物の瑕疵が重大であるために,建て替えざるをえない場合には,建替費用相当額の支払を請求することができます(最判平14・9・24)。