遺言・相続

父が亡くなりました。相続人の一人である弟が父の口座からお金を抜いていたようなのですが,そのことは遺産分割調停の中ではどのように扱われますか?

まずは,払い戻したのが本当に弟さんなのか,というのが問題になります。
例えば,銀行から,開示を受けた取引履歴をみると,父が入院して出金できないはずなのに,出金がされている,通帳とカードは弟だ,ということであれば,払い戻したのは,弟だろうということになります。

つぎに問題になるのは,弟の出金が父の求めによるものかどうかです。
弟が単に身動きがとれない父の代わりに父が使うお金として出金をしたというのであれば,その出金したお金は遺産分割の対象にも,民事訴訟で返還を要求する対象にもなりません。

3番目に問題になるのは,出金したお金の使い道です。例えば,弟が,「それらのお金は,父の治療費に使った」や「葬式代に使った」という場合もやはり,その出金したお金は遺産分割の対象にも,民事訴訟で返還を要求する対象にもなりません。一方,弟が自分のために使ったということであれば,その出金したお金は,遺産として合意される結果,弟が先払いを受けていた分,あなたの取得額は増え,弟の取得額は減ります。

最後に,弟が何に使ったか言わなかったり,何か言ったとしてもそれが信用できない場合などの場合(使途不明金となっている場合)は,遺産分割の問題ではなくなってしまいますので,別途,民事訴訟を提起して,その金銭の返還を求めることになります。
遺産分割調停の中では考慮されなくなり得る点に注意が必要です。