労働問題

賃金額の引下げについて労使間で合意が成立したと認められるには,どうすればよいですか?

賃金額引下げという契約要素の変更申入れに対し,労使間で合意すれば,賃金を引き下げることができます(労働契約法8条)。
「合意」でよいとされている以上,書面を作成することまでは求められていません。
もっとも,後日,合意の有無が争いになった場合に備えて,客観的な書証等を作成することが好ましいです。

不利益変更にあたって反対の声が出なかったことや,長期間にわたって不利益変更後の制度に沿って対応していたことをもって,黙示の合意があったのだという主張は認められないおそれがあります。
使用者が提示した賃金額引下げの申入れに対して,ただ労働者が異議を述べなかったというだけでは黙示の合意が成立したとは認められず,労働者が労働条件の不利益変更を真意に基づき受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であると判断した裁判例(東京地判平24・2・27)があります。

なお,同判例においては,減額に対する理解を求めるための具体的な説明をしなかったこと等も減額合意が無効であるという判断における重大な考慮要素であるとされています。