遺言・相続

父とはずっと音信不通だったのですが、このたびその父が亡くなったと親戚から連絡が来ました。すると、父の債権者を名乗る銀行から督促状が届きました。私はどうしたらよいでしょうか?

父の残した財産を取得したいと考えるかどうかによって,なすべき行動は変わってきます。

父の財産を取得したいのであれば,なすべき行動は2パターンです。
一つは,何もしないという方法です。
何もしないで,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期間を経過すると,単純承認がなされます(民法921条2号・915条1項)。
単純承認がなされれば,債権も債務も全て相続することとなります(民法920条)。
この場合,父が銀行に対し債務を負っていたのであれば,それも相続することになります。

もう一つは,限定承認(民法922条)をするという手もあります。
限定承認をすれば,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済することで足りるようになります。
イメージでいえば,プラスの財産からマイナスの財産を差し引いたものを相続することになります。
もっとも,限定承認は,法律に従ってなされる必要があります。
まず,相続人が複数であれば,全員で共同してなさなければならず,一人でも限定承認をしなければ,全員について限定承認がなされないことになります(民法923条)。

つぎに,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,相続財産の目録を作成した上で,家庭裁判所に提出しなければなりません(民法924条・915条1項)。
銀行からの督促状の額が大きい等の理由で父の財産を取得したくないというのであれば,相続の放棄をなすべきです(民法915条1項)。
相続の放棄をすれば,プラスの財産も取得できませんが,マイナスの財産を取得することを逃れることができます。
相続の放棄についても,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内になす必要があります。
相続の放棄については,撤回できませんので,注意してください(919条1項)。
なお,以上の説明は,遺言がなかった場合です。

遺言があった場合については,また別の話になりますので,遺言の有無も調査するべきです。