遺言・相続

病院で身の回りの世話があったことについては,相続で取得する額に影響がありますか?

遺言がない場合は,その遺言どおりに相続がなされますから,内助の功として妻が果たしてきた役割が影響することはありません。

遺言がある場合,寄与分が認められるかという問題がありますが,この点に関連して,民法904条の2第1項は,寄与分の要件として「特別の寄与」があることを定めています。
「特別の」と限定がなされているのは,被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分の定め自体において評価されている(例えば,相続人が妻と子2人の場合,妻の相続分は2分の1,2人の子の相続分はそれぞれ4分の1と多い。)とみることができ,特にこれを相続分の修正要素として扱う必要がないからです。

病院で身の回りの世話をすることが「特別の寄与」にあたると認められるためには,被相続人の病状等に基づく療養看護の必要性の有無や内容,療養看護を要した期間,看護・介護にあたった当事者の年齢,対価支払の有無や内容等を考慮して,社会通念に照らし,当該療養看護が被相続人との身分関係から通常期待される程度を超えるものであることが求められます。

たとえば,重い老人痴呆の被相続人を10年間にわたり看護してきたケース(盛岡家審昭61・4・11)や寝たきり状態となった被相続人を28か月にわたり介護したケース(神戸家豊岡支審平4・12・28)などで,特別の寄与が認められています。