遺言・相続

結婚した際に親から結納金と挙式費用をもらったのですが,このことは相続に影響しますか?

影響しないことが多いです。

問題は,その贈与された金銭が特別受益(民法903条)にあたるか否かです。

特別受益とは,共同相続人間の実質的な不平等を調整するため,相続分の前渡しと評価できる生前贈与について,相続財産に加算(持ち戻し)をして,さらに,その贈与を受けた人に対する具体的相続分から生前贈与された分を差し引くというものです。

たとえば,5000万円の財産を持っている父が死亡したとき,息子2人のみが相続人となった場合,もともと相続するのは2500万円ずつですが,そのうちの長男に1000万円の相続分の前渡しと評価できる贈与がなされていたとします。
この場合,長男が贈与された1000万円は,父の財産に持ち戻され,その結果,父の財産は6000万円と計算されることから,息子の相続は3000万円ずつとなるが,長男はすでに1000万円もらっているため,長男の相続分は2000万円となります。

まず結納金とは,判例上,婚姻予約の成立を証するとともに,併せて将来成立すべき婚姻を全愛知都市,その親族関係から生ずる相互の情誼を厚くすることを目的とする一種の贈与であるとされています(大判大6・2・28)。実務的に特別受益にあたるとする例もありますが(京都地判10・9・11),特別受益にあたらないとする例が一般的なようです(名古屋地判平16・11・5,東京地判平18・5・26)。

挙式費用についても,婚姻をする当事者のためというよりも,親の社交上の出費としての性質が強いと考えられており,やはり特別受益にあたらないとするのが一般的なようです(名古屋地判平16・11・5,京都地判10・9・11(なお,同裁判例では,結納金については特別受益にあたると判断している))。

もっとも,特別受益にあたるとした例もあります(長野家審昭57・3・12)。