労働問題

上司が強い口調で叱責してきます。 このような場合,上司に慰謝料を請求することはできますか?

上司等,職場において管理監督する立場にある者は,それらの権限行使に関して部下の人格権侵害をもたらすことのないように注意する義務を負っています。
その義務の違反になるかどうかは,部下の犯したミスの程度も考慮に入れつつ,注意,叱責の度合いが社会通念に照らして許容されるかどうかという基準で判断されます。
したがって,同基準に照らして,許容されないのであれば,上司及び会社に対し,損害賠償の請求をすることができます(民法709条,715条,415条等)。

例えば,サービスセンターの所長が現に実績が芳しくない部下に対し,一部が赤文字の大きな文字で「意欲がない,やる気がないなら,会社を辞めるべきだと思います。当サービスセンターにとっても,会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を挙げますよ。これ以上,当サービスセンターに迷惑をかけないで下さい」と記載し,メールをした事件においては,同メールが同じ職場の従業員十数名にも同時送信されたことを重視し,上司に対する5万円の損害賠償請求権を認めました(東京高判平17・4・20)。